忘れることができないくらいの、濃厚なキス。

「最ッ悪…」

とは言って見ても、指で唇に触れてる自分がいた。

そして、あの男が名乗った名前。

五十嵐、雄平。

彼は一体、何者なの……?


仕事を終え、店を出た時だった。

「あなたが、紺野瑠璃さんですか?」

名前を呼ばれて振り返ると、1人の年配の男がいた。

きっちりとスーツを着こなしていた。

“老紳士”と言う言葉がよく似合っていた。

「そうですけど……あなたは?」

「私は執事の山田と申します」

丁寧に頭を下げる山田さん。

「その山田さんが、何か?」

私の問いに、山田さんは顔をあげた。

「ちょっと、一緒にきてもらえませんでしょうか?」

「は…はい?」

驚いて、私は聞き返した。