「今、どうしてる?」
花帆が、俺の顔を覗き込んでくれたのに、俺は視線を合わすことすらできない。
Gパンのひざの部分を見つめたまま答える。
「貿易会社で働いてるんだ。これでも相当勉強したんだよ。お前と一緒の高校は行けなかったけどさ」
俺、何言ってんの?
緊張がピークを過ぎて、おかしくなってしまったようだ。
止まらない。
「お前と一緒の高校行きたくてさ、勉強頑張ったんだけど、さすがにあそこは無理だった。でも、そのおかげで、落ちこぼれだった俺が大学まで行けたし、今の会社にも入れたんだ」
言いたかったこと。
ずっと言いたくて言えなかったこと。
「そう……だったんだ」
え、どうしたんだ?
花帆!!
「何、泣いてんだよ」
花帆の目から、ぽろぽろと大粒の涙がこぼれていた。
それを見た俺の目からも涙がこぼれる。
変なふたり。
ふたりして泣いてる。

