長袖では暑いくらい。 体が汗ばんでいる。 本屋を出て、人通りの少ない道まで俺は振り向かずに歩き続けた。 どこへ行くかも、何をするかも考えていなかった。 ただ、花帆に会いたかった。 後ろに…… 花帆がいるっていうのに、俺はまだ顔すら見ていない。 「どこ行く?」 俺は斜め後ろに顔を向け、花帆に話しかけた。 車通りだった為か、花帆は俺の声が聞き取れなかったようだ。 「え?何?」 聞き返した花帆は、前を歩く俺の隣に来た。 目が合った。 花帆を見た。