花帆がそこにいると思うと、振り向くことができない。 気付いているのに、気付かないふりをして雑誌を見ていた。 「新垣君……だよね」 花帆の声。 どう表現していいのかわからない。 この感じ。 とにかく胸が苦しい。 ドキドキして、フラフラする。 「あ…… おう」 俺は花帆の顔を見ないまま、雑誌を棚に戻し、本屋の出口へと向かう。 俺の後ろにいる。 花帆が。 初恋の人が。