もしもしっていう4文字だけで、
俺はその声の主が花帆なんだってちゃんとわかった。
ちょっと鼻にかかった甘えるようなかわいい声。
覚えてる。
俺の耳が、心が・・・・・・
全てが花帆を記憶しているんだ。
「もしもし」
『もしもし』
あの頃は、電話さえできなかった。
本当に子供だった。
自分の気持ちも言えず、感情を素直に表せなかった。
「もしもし、新垣です」
『久しぶり。覚えてくれてたなんて』
覚えてくれてた?
そんなもんじゃねーよ。
忘れることなんてできるわけない。
お前、相変わらずわかってねぇな。

