「ごめんね。今までありがとう」 深く頭を下げた花帆。 ――今までありがとうって言葉がどういう意味なのか、俺もわかっていたはず。 教室から飛び出した花帆。 廊下までは追いかけた。 でも、廊下を走っていく花帆の背中をただ見つめたまま、心の中で呟いた。 『行くなよ』 声に出せば良かった。 手を伸ばせば良かった。