追いかけようとした俺の目に入ったのは、花帆の机の上の落書き。
『ガリベン』
『どろぼう』
『男好き』
油性ペンで書かれた落書き。
俺、何やってんだろう。
花帆の痛み、全く気付いてやれなかった。
いつからだろう。
こんな嫌がらせがずっと続いていたのに
花帆は、いつも笑顔だった。
雑巾を濡らして、机を拭いた。
「ちきしょ」
全く落ちない。
俺は、教室の後ろの棚に置いてある女子のマニキュアのコレクションの中からマニキュア落としを探した。
雑巾にそれを含ませ、机の落書きを消した。
綺麗になりすぎて、花帆の机だけ新品のようだった。
だから、俺は全員の机を拭いた。
花帆の机だけが目立つといけないから、
全部の机をピカピカにした。

