**LOVERSⅢ** BGM


夏の夜が更けていく。


あなたの車の助手席は、いつだって私の指定席だった。

それなのに、今夜はまるで他人のもののように感じるのは、あなたの心が離れてしまっているからだろうか。

切なく悲しい別れの歌がカーラジオから流れ出す。

二人の恋の行方をそのまま映したような歌詞に、車内に妙に重苦しい空気が漂う。

それはまるで、運転席と助手席の僅かな距離に引かれた、見えない境界線のように感じた。


いつも太陽みたいに笑っていたあなた。

あなたの笑顔が少なくなったのは、いつの頃からだろう…。

それに気付きながらも、気付かないフリをしていたのは私。

あなたの視線が目の前の私ではなく、何処か遠くを見つめだした時から、いつかこんな日が来るのは分かっていた。

それでも、少しでもあなたの傍にいたくて…

現実を見るのが怖くて…

別れを切り出そうとするあなたの気配を感じるたびに、必死に明るく振舞って話題を逸らし続けていた。

私のその行動があなたを追い詰めていることにも気付かずに。