『短編集』


目を閉じると、一瞬であの頃の私が鮮やかによみがえる。

こうた君の顔。

こうた君の声。

私の背中を押すやさしい手も。



私は、しばらくその余韻を楽しんだ。

と、

なにやら幼稚園の中から私をじっと見ている人がいて。



・・何?ひょっとして、怪しい人に思われたのかな?



確かに自転車に乗って、こんな夕暮れ時に幼稚園をじろじろ眺めるなんて、

かなり怪しい人かもしれない。


その人は、よく見ると男の人で、私と変わらないくらいの年に見えた。

ゆっくりと、こちらへ近づいてくる。


私が慌てて自転車にまたがると、その人は、

私に声をかけてきた。


「ひょっとして、ひーちゃん、じゃない?」


幼稚園の時の呼び名に、私はびくりと反応した。