『短編集』


「ひょっとして、心配した?」


「そりゃね、だって、

つぶれた箱を抱えて泣いてたもの。

もしかして、受け取ってもらえなかったのかと思って、

こうた君のお母さんに電話したけど、

チョコの話は知らないって言うし」


「えぇ?!

お母さん、こうた君のお母さんに電話したの?」


「そりゃするわよ。

幼稚園のお友達なんて、遊ぶのだって皆、

親が送り迎えしてたのよ。

忘れた?」


正直、そんな細かいことは、すっかり記憶の外で。

つぶれてしまった箱を、

お母さんに見せたくなくて、こっそりゴミ箱に捨てようとしたことも思い出した。

でもまさか、お母さんがこうたくんのお母さんとチョコの話をしてたなんて、

今この瞬間まで、思いもしなかった。