『勧善懲彼(かんぜんちょうかれ)迷惑な俺様彼氏』


「その女は決まってまずトイレに立ち寄って、

周囲を気にしつつも、洗面台の水をがぶ飲みし、

顎に滴り落ちる水を

こ汚いジャージの袖でぬぐってから、

雑誌の立ち読みを始める。

普通女子中高生が読みそうなファッション雑誌に目を通すものの、

真剣に見てるのは、

占いコーナーのみ。

しかも、ぶつぶつ声に出して読んで、

運勢がよければガッツポーズで、よっしゃ~!

と雄たけびを上げ、

悪ければ、どうしようと

悲鳴を上げる。

そのくせ、決して商品を買うことはない。

そのことに少しの罪悪感を覚えるのか、

気配を消してこっそりと外へ出る。

出たとたん、ダッシュで逃げる。

こんな迷惑な客を、店員が覚えてないわけないだろう?」