名残を惜しんでいると,斜め前のお姉さんがやってきた。


「部屋,替わるんでしょ?これ,あげる。」
そう言って,綺麗なフラワーアレンジメントをくれた。
お姉さんの手作りみたい。
お姉さんのベッドの周りには沢山,花が飾ってあったのが見えたから。


「有難うございますっ!!うわぁ…綺麗…!短い間でしたが,有難うございましたっ!」

ペコリと頭を下げてお礼を言った。

お姉さんは,いえいえ,と言ってベッドへ戻って言った。









そこに,パタパタと看護士さんが走ってきた。


「柊さんっ…少し…良いですか?…
あの,部屋替わらないって今更言ったら…怒ります?!」

息をきらしながら,看護士さんがまさかの発言。







「いっ…いえ…別に,良いですよ!」


「主任が,部屋移動しなくて良いように手配して下さったんで…また,退院までこの部屋って事で…ごめんね。」

そう言ってまたパタパタと走っていってしまった。





名残惜しんでいた私には,ラッキーだった。


但し…
お花貰っちゃったし…。

どうしよ…
返すわけにもいかないし…







とりあえず,お母さんに移動しなくて済んだ,ってメールしなきゃ。

枕元の携帯を取り,メールを送った。



この変更が,今後の私を大きく左右したのだった。