どんなライブの時でも必ずする事がある。
薄暗いステージの上、上手の立ち位置にあるマイクスタンド。
歓声が上がる中、俺はストラップを肩に掛け、左手でギターのネックを掴む。
ピックを一枚、マイクスタンドから抜き取る。
その瞬間。
俺はマイクにキスをする。
集中するオーディエンスの視線が気持ちいい。
マイクを通して観客の耳に注がれる軽いリップ音の後、襲いかかるような黄色い歓声。
毎度の事ながら背筋がゾクゾクする程イイ。
刹那、俺のスイッチは、オンになる。
『Crimson Scarのタキ』という、スイッチ。



