「あの……サイトさんって…以前ドラムやられてた方ですよね…?何かあったんですか?」

おずおずと遠慮がちな声で櫻井が口を開いた。

その声にふと顔を上げ、俺は新米マネージャーを見つめた。

「あぁ…オマエは知らないか。当たり前だよな……」

――あの事は、世間には知られずに裏でもみ消された。

結果、表面に出たのは、彩都がCrimson Scarを脱退するって事実のみ。
脱退理由も、一身上の都合で、っていう素っ気ない理由。

おかげで暫くはマスコミに色々詮索された。

「櫻井さ…彩都がなんで辞めたのか知ってる?」

おもむろに俺が問いかければ、マネージャーは首を傾げて少し考える。

「僕は…あまりよく知りません。確か当時は仲違いだ、とか音楽の方向性が違う、とか言われてましたよね?」

そう。
勝手な憶測をたてて騒いだマスコミの出した答えは、何の面白みもない、ありきたりのものだった……。