俺はすぐ手前にいるベーシストに目をやる。
下手の袖から覗いてるから必然的に歌夜の姿はよく見えた。
笑顔をたやすことなく跳ねるようなベース音はドラムのリズムの上をぴょんぴょん飛び回り、ギターを引き立たせる。
女だっていうのに、男顔負けのしっかりした音だった。
4人の出す音、声がライブハウスを支配して、そのステージを極彩色に輝かせていた。
「━━くそっ……アイツらの音、ムカつく」
舌打ちと共にショウが声を漏らした。
その瞳には嫉妬の色と、懐かしいものを見るような複雑な光が浮かんでいた……。
「……なんでムカつくか教えてやろうか?」
俺は皮肉な笑みを浮かべ、ショウに告げた。
「アイツらは……昔の俺達に、そっくりだからだよ……」