VOICE・2


楽屋を出ていったライと櫻井を横目で見やってから、俺はショウを睨みつけた。

「別にいいって……なんだよそれ?ライブやれなくてもいいってことかよ?」

俺とショウの間の空気が一瞬で凍りつく。
それを気にする様子もなく、ショウは口を開いた。

「ライブの一つや二つ、蹴ったってどうとでもなる。……だいたい今の観客たちなんか、俺達の音を聴きに来てるんじゃない。……ライの顔だとか、流行だとか、そういうふざけた理由で寄って来てるヤツらばかりだ。…違うか?」

「それは……」

わかってるさ、そんな事、百も承知だ。でも…それでも俺は、その中の10人でも20人でも、本気で俺達の音楽を聴いてくれてるヤツがいると信じたいんだ……。
あの頃みたいに………。

「そんなヤツらの為に……大衆に媚びるだけのライブなんて…やってられるかよ」

ショウが唇を噛み締めて呟いた。

それは、いつもは自分の感情をひた隠しにしてる彼が、クールな仮面を僅かに外した瞬間だった。

苦々しく顔を歪めるショウの素顔を、久々に見た気が、した。