俺はボーっとしながら自分達の楽屋に戻っていた。今目にした珪甫の姿が頭から離れない。
「タキ?どうした?」
俺を見て、ショウが口を開いた。コイツは無関心なように見えていつだって一番最初に気付く。
「ショウ……今日の前座、ライの奴が見たらヤバいかも…てか見せない方がいいわ」
「…?それどういう……」
意味が分からない、と眉をひそめたショウが言葉を続けようとした時、タイミング悪くライが入ってきた。
思わず口をつぐんだ俺たちはそっちを見ていた。
「な、なんだよ?」
目を丸くしているライは今の会話は全く聞こえていなかったみたいだ。
そのまま部屋の片隅にあるソファに座って、ヘッドフォンを耳にやり音楽を聴き始めてしまった。
「……とにかく、オマエも見たらわかる。あのバンドのドラマー……彩都にそっくりなんだよ」
「………!?」
いつも表情を崩さないショウの顔が、ピクリと強張った。
煙草を持つ手が微かに震え、そのまま灰皿に直行した。



