「あ。ごめん」

後頭部を押さえ振り返った俺の目に映った人物。

俺とそう変わらない身長で、黒い瞳でチラッと俺の顔を見た。短めの黒髪をツンツンにセットし、生意気そうな表情を見せる。

そいつはドアを閉め平然と楽屋に入り、そのまま俺をスルー。

スルー……。





「……サイト…?!」

思わず声が出ていた。

有り得ない。
彩都にそっくりだ、コイツ……。

唖然として突っ立ったままの俺を心配顔で見つめながら、歌夜が寄ってきた。

「あのぉ…タキさん?どっか変なところ打ちました?」

「おい…アイツもしかして、お前等のドラマーか?」

「え?はい、珪甫です」

珪甫……名前も、年も違うけど。似てる。

「サイトって…、少し前までメンバーだった人のことですか?」

不意に紅志が話し掛けてきた。
その言葉にピクリと反応してしまった俺。

目の前の珪甫は、俺のことなんて目もくれず煙草を吸いだした。

アイツは煙草は吸わない。
そうだよ、彩都がココにいるはずねぇよ。だってアイツは……。