――車で20分程走って、目的のレコーディングスタジオに到着した俺たちは、つい最近まで入り浸りだったスタジオの一つへと向かった。

「あ、来た来た!お疲れ~」

ドアを開ければ、プロデューサーの中野のにこやかな笑顔に迎えられた。

「こんちは……どうしたんすか、中野さん。今ってべつに曲作り期間じゃないっすよね?」

ソファを勧められ、俺はそこに腰を下ろしながら疑問を投げかける。
すると彼は、大きな体でなんとか細いスツールに腰掛けながらニコニコと笑顔のまま話し出した。

「実はね僕、君たちのレコーディングプロデューサー降りることになってさ」

「えっ……?!」

「なんでいきなり?!」

そんな話、初めて聞いた。

「他でやってる担当の子が忙しくなってね……、それに……」

そこで口をつぐんで、中野は少しだけ寂しそうな表情を浮かべた。

「それに?」

俺が先を催促するように口を開くと、やや躊躇いがちに彼は言葉を続けた。

「そろそろ君たちも、自分たちの音を出したいんじゃないかな、と思って」

…………!!?