「聞きたいんだけどさ……そこの彼女、今フリー?」
「え……っ!」
紅志が一瞬息を飲んだのがわかった。表情が険しくなる。
あ、もしかして……。
そう感じた時、当の本人がこっちにやって来た。
「え?私、今暇ですけど……?」
にっこり笑って言った歌夜に、俺は苦笑い。
「そうじゃない、俺はキミが今付き合ってる男はいるのか?って訊いてるんだよ」
人差し指で歌夜と呼ばれた女の鼻先を指差せば、歌夜は一瞬息を呑んで横にいる紅志に視線をチラリと投げた。
楽屋の空気も一瞬で緊張が走る。
……やっぱこの二人…?
「……いえ、いませんよ、私。今は…彼氏いらないです!」
無理矢理笑顔を作ってるのが丸わかりな顔で、歌夜は笑った。
その横の紅志はといえば、なんとも気まずそうに視線を床に落とし、唇を噛んでいる。
……なんか、複雑そうだけど。



