――いつもよりテンション高くリハを終えたライを尻目に、俺はこっそりとPRISONERの楽屋のドアをノックした。

「ハイハーイ………」

呑気な声がして開けられたドアの内側、目を丸くした女が立っていた。

「あ、俺…」

「タッ、タタタタタタキだぁ~~っ!!」

艶やかな黒髪を揺らして彼女は叫んだ。

……カツオのタタキみたいだけど。

じゃなくて!

「ちょっといいかな?」

俺は営業スマイルを見せ、楽屋に入って後ろ手にドアを閉めた。

ライには見られたくない。

「海斗!タキだよタキっ!」

声高に叫んだ女は、椅子に座って音楽を聴いている海斗の肩を叩いた。

「へ?何、歌夜……って、あぁ!タキだぁ~っ!」

………。

「お前ら…うるせぇ……」

思わず呟いてしまった俺に、冷静な声が聞こえた。

「なにか、ありましたか?」

ギャーギャー騒がしい二人の頭を小突いて、ギタリストの紅志が俺を見た。