VOICE・2






――確かな目標が定まると、動きやすくなる。





筈だったんだけど。
あの日のライブから数週間。久しぶりのオフ。

どれくらいそうしていたのか、俺はケータイを片手に自宅マンションの部屋で固まっていた。

目の前のテーブルの上に置かれた一枚の紙切れ。

あの男の名刺。

それをずっと見詰めたままだった俺はおもむろに握ってた携帯電話をポイッとソファに放り出した。

「だぁっ!!やっぱこっちからアイツにかけるの、なんかシャクだ!!」

そう喚いて自分自身もソファに倒れ込んだ。
すると背中の下敷きになった携帯電話が鈍い振動を伝えてきた。

「――もしもし?」

誰からの電話かも確認せずに通話ボタンを押せば。

『タキ~~ッ!!フラれた~~ッ!!』

「………なに、その雰囲気ぶち壊しのタイミング」

『ぶち壊し!まさにそれだよ!あの男に歌夜とられたんだよ!!』

「そりゃあご愁傷様」

キャンキャン喚く子犬がウルサくて、思わず電話を耳から離した。