海斗と珪甫が脇にずれ、ゆっくりと楽屋に入ってきたのは、かつては俺たちのドラマーだった男。

刺々しい空気を全身に纏って、声を掛けるのも憚られるような雰囲気の彩都は、無言で俺たちの前に立っていた。
肩まで届く程に伸びた黒髪の間、覗く目はジッと床を見つめたままで、こっちを見る気配はない。

俺たち3人が、そんな彩都を言葉もなく見つめたまま立ち尽くしていると。

「じゃ、俺たち外にいるから、話が終わったら声掛けてねー」

軽い調子で海斗が言い放つ。

「え?!」

「え?」

俺の声に同じ様に返してくる。

「出てく、のか?」

めちゃくちゃ重い空気なのに、コイツがいなくなったらもっと……。

「だってこれは彩都とタッキーたちの問題。俺たちが口出すことじゃないもん」

あっさりと切り捨てた海斗は、珪甫と、櫻井すらひっぱって楽屋のドアをパタン、と閉じて出て行ってしまった。

……どうすればいいんだ?!

俺もライも、そっと目を合わせて情けない顔するしかなかった……。






あぁ、もう。へタレと呼んでくれたっていいさ!
それでも俺にはなんて声を掛けたらいいのか、全然わかんなかったんだよ!