タイミングがいいのか悪いのか、俺たちが沈黙した、まさにその瞬間。

コンコン。

「櫻井ですー、入りまーす」

いつもと違って、少し緊張気味の櫻井の声。
楽屋のドアがゆっくり開けられた。

ごくり。思わず喉を鳴らして、ドアを凝視した俺の視界にまず……。

「タッキー!!ひっさしぶり~~!!」

……うっざ……。

ニコニコ顔のその顔と。
この場の空気に全く馴染まない、能天気な海斗の声が響いた。
しかし次の瞬間。

「黙れ、馬鹿」

という冷たい声と共に、海斗の頭を叩く音。

叩かれた頭を擦る海斗のすぐ後ろに立っていた珪甫が、冷めた視線でこっちを見ていた。

その視線がさっきステージから見たアイツのそれとカブる。

「どうも」

それだけ言って、珪甫はチラリと自身の背後を振り返る。

そこには、彼よりも少しだけ背の低い、でも顔つきはとてもよく似た……。

「彩都……」