………いた。
かろうじて顔の判別のできる階段状になってるフロア3段目の柵の左端。
知ってる顔が、そこにあった。
最後に見た1年半前より伸びた黒髪と、やつれたように痩せた顔。
その中で鋭い一重の目だけは変わらず、ステージを射るように見つめている。
彩都………。
心臓が大きく打った気がした。
瞬間、息が止まる。
……けれど、その姿が確認できたのはその一瞬だけ。
次の瞬間には、自分に当てられた照明で、視界は遮られてしまっていた。
「アイツ……来てたな」
本編が終わり、一旦楽屋へ下がった途端、ライが口を開いた。
気付いてたんだ……。
てことはショウも、と思って目を向ければ。
「いたなぁ、3段目の端に」
「………」
その後は3人して黙り込んでしまう。
ライとショウが何を考えてるのかなんて、すぐ分かった。
きっと俺と同じだ……。
さっき見た彩都は、俺たちの知ってる彩都じゃなかった。
明るくて、いつも笑いながら冗談言ってた彩都が、俺たちの知ってるアイツだ。
じゃあ、さっきのは……?



