VOICE・2



上手の自分の立ち位置へ向かいながら、俺の視線は自然とオーディエンスへと向けられる。


見えるわけ、ねぇよな……。


薄暗いハコの中、観客の姿は前列のヤツらしかよく見えないから。


キャーキャーと必死でこっちに手を振る最前列の女に、チラリと流すように視線を送って、俺はマイクスタンドにたどり着いた。


スタッフからギターを受け取り、ストラップを肩に掛ける。


そして恒例の―――。


マイクに接吻(クチヅケ)。


湧き上がる黄色い悲鳴。


うん、今日もイイ声だ。