明るかった会場の中、フッと客電が落ちる。
それと同時に一瞬の沈黙。
次いで、割れんばかりの歓声。
オーディエンスからのパワーの波が襲って来るみたいに、空気が揺れた。
「よし、行くぞ」
ショウが拳を突き出した。
コツンとその拳に俺とライ、斎藤のそれが順に当てられる。
まずショウが足を踏み出した。
薄暗いステージの上、ショウの姿が見えた瞬間に湧き上がる声は、耳が痛くなるくらいに膨らんだ。
ほんっと、アイツ人気者だよな。
上から下まで黒い衣装でキメてるショウの後ろ姿に少しばかり嫉妬しつつ、俺は深呼吸をする。
そして、自分をもう一人の自分へと切り替える。
ポン、とベストなタイミングでライの手のひらに背中を押された。
「っしゃ!」
小さく気合いのひと声を出してから、俺はステージへと踏み出した。



