VOICE・2






ステージ袖。俺たちはザワザワと騒がしいライブハウスの空気を感じながら、スタンバイしていた。

今日はサポートドラマーの斎藤ってヤツもいて、ステージにあがるのは4人。

斎藤のドラムは正確だ。正確過ぎて、時々嫌になるけど。

「今日、頼むな、斎藤」

「はい!頑張ります!」

人懐っこい笑顔を見せる斎藤の背中を軽く小突いて、俺は深呼吸を一つ。




彩都はこの会場に現れるだろうか?

俺たちの音楽を聴いて、大丈夫なのか?



そんなことをモヤモヤと考えながら、すぐ横で水を飲んでるライに目を向けた。

目にかかりそうだった前髪をいくつかに分け、捻ってピンで留めた髪型が似合っている。
形の良い額の下、何かを決意したような意志の強い瞳が、真っ直ぐに薄暗いステージを睨んでた。

「ライ……歌えるか?」

話しかけると、その瞳を正面に向けたまま、ライは口を開いた。

「当たり前」

「無理は――」

「してない」

「なら安心だ」

ふん、とライが笑うように鼻を鳴らした。

やっぱり、吹っ切れてる。