VOICE・2



「君達が本気で自分たちの音楽をやりたいと、この現状から抜け出したいと……そう思ったら連絡ちょうだい」

「え……?あ!ちょっ!?」

小さな紙切れをスイッと俺のジャケットの胸ポケットに滑り込ませ、東條はクルリときびすを返した。
そしてスタスタと歩き出してしまう。

「じゃ、今日のライブ楽しみにしてるから~」

ひらひらと手を振りながら表通りへと続く路地へ消えるヤツの姿を見ながら、俺はポカンとその場で突っ立っていた。

「アイツ……なんなの、マジで」

「さ~あね……」

たいして興味無さそうに言いながら、ショウはおもむろにしゃがみ込んだ。長い指先でさっき東條に踏みつけられたセーラムライトの吸い殻を拾う。
それを自分の携帯灰皿にポイッと収めると、しゃがみ込んだままで俺を見上げた。その瞳が少しだけ呆れてる。

「タキー、オマエもさぁ、やられっぱなしじゃなくて何か言い返せよ」

「う……分かってるよ!分かってるけどさ……何言ったらいいかわかんねえんだよっ」

本当に、俺そういうの苦手なんだってば……。