VOICE・2



ザリ……ッ。

靴底で煙草の火を踏み消した東條は、ふと何かに気づいた様子で顔を上げた。
その視線が俺から逸れて、ライブハウスの裏口へ向けられる。

………?

「そんなとこで聞いてないで、出て来たら?」

見透かしたような東條の問い掛けの後、俺が閉め損ねたのだろう、半開きになってたドアがゆっくりと動いた。

「ショウ……」

「東條さん、あんまりウチのギタリスト虐めないでください」

後ろ手にドアを閉じたショウは、ゆっくりと俺の隣まで近付いてきて、その鋭い瞳を東條へ向けた。

「虐めてないよ、俺は。事実を言っただけ」

そう言って、ヒョイと肩をすくめてみせる東條は、相変わらず見てる方が苛っとする笑顔のままでスーツの内ポケットへ手をやった。

「はい」

そう差し出したのは一枚の名刺。

「何?これ。どういうつもり?」

俺が呟くように問えば、眼鏡の奥の切れ長な目がますます細くなる。