ショウは吸ってた煙草をゆっくりと灰皿に押し付けながら口を開いた。
その目は真っ直ぐにライを捉える。
「オマエ、自分が何したかわかってる?」
「………」
「オマエはさ、テレビの前のファンも、さっきの番組のスタッフも、心配してくれてた櫻井も……全員を裏切ったようなもんだ。ついでに言えばタキと俺のことも」
怒ってるのか呆れてるのか判断しかねる表情で、ショウはすでに火の消えたはずの煙草をグイッと押し付けたままライを見詰めている。
「な、んだよそれ……」
喉から、絞り出すように出されたライの声が震える。
「オマエ何の為に歌やってんの?歌いたいからだろ?オマエのその声、俺らの音楽聴いてくれてる奴らに聴かせる為だろ?」
「……っ、だけど、サイトが……、アイツが俺の歌聴きたくないって。……俺が歌わなきゃアイツ良くなるんじゃないかって……そう思ったら、声が」
声が出なかったんだ。
最後は小さく、小さく呟くように言葉を吐き出して。
ショウの真ん前で突っ立ったまま、ライは両手で自分の顔を覆っていた。
あーあ、泣いてらぁ。
二人の様子を眺めてた俺は、小さく息を吐いてから静かに立ち上がって、その泣き虫なボーカリストへ近付いた。



