VOICE・2



テレビ用に短くされた曲はあっという間に終わる。

最後の弦を弾いた俺の視界の中、ショウがおもむろにライの肩を抱えるように掴んだ。
そしてマイクに向かって口を開いた。

「実は今日、コイツ風邪ですっげぇ熱があってさ、声出ないんだ。でも直前まで歌うってきかなくてさぁ。だけどやっぱ駄目だったみたいだから替わりに今日は俺が代理ね」

おいおいおい、何言っちゃってんだよ!?

思いっきり心の中でツッコミを入れた俺だけど、当然そんなの気付くはずもなくショウは話し続ける。

「だからライの歌声、聴かせてあげられなくてごめんね。次のライブまでにはこの俺が治させるから、それまで待ってて?」

そう低いウィスパーボイスをマイクに乗せた。おまけにカメラに向かって爽やかな笑みで片目を閉じる。

……こいつ!!

一瞬、テレビの前で失神する女どもの幻影が見えた気がした……。

どんだけ臨機応変なんだよ、とショウの横顔を呆気にとられて眺めていたら、その横顔がくるりと俺に振り向いて。
ニッと唇をあげるヤツがいた。





う~ん、完敗。