テレビ用に短くされた曲はあっという間に終わる。
最後の弦を弾いた俺の視界の中、ショウがおもむろにライの肩を抱えるように掴んだ。
そしてマイクに向かって口を開いた。
「実は今日、コイツ風邪ですっげぇ熱があってさ、声出ないんだ。でも直前まで歌うってきかなくてさぁ。だけどやっぱ駄目だったみたいだから替わりに今日は俺が代理ね」
おいおいおい、何言っちゃってんだよ!?
思いっきり心の中でツッコミを入れた俺だけど、当然そんなの気付くはずもなくショウは話し続ける。
「だからライの歌声、聴かせてあげられなくてごめんね。次のライブまでにはこの俺が治させるから、それまで待ってて?」
そう低いウィスパーボイスをマイクに乗せた。おまけにカメラに向かって爽やかな笑みで片目を閉じる。
……こいつ!!
一瞬、テレビの前で失神する女どもの幻影が見えた気がした……。
どんだけ臨機応変なんだよ、とショウの横顔を呆気にとられて眺めていたら、その横顔がくるりと俺に振り向いて。
ニッと唇をあげるヤツがいた。
う~ん、完敗。



