VOICE・2



「ま、とにかく、タッキーが何に悩んでるかは分かんないけど、吐き出したいことは早めに吐き出した方がいいよ。後になればなるほど辛いから、さ」

そう言った海斗の顔が一瞬だけ翳ったような気がしたけど、それこそ俺が口出しするようなことじゃない気がして。

「サンキュ。……とは言ってもすでに手遅れな感じだけどな」

「え?マジ?!」

目を丸くしてこっちを見たその海斗の視線に、苦笑を返しながら俺はベンチからのっそりと腰を上げる。

「あ……」

ふと思いついて、俺は海斗の小さな頭を見下ろす。
ん?と目線をあげた造りの良い顔に、一つだけ質問を投げかけた。

「オマエんとこのベース、本当にフリー?ライにメアドとか教えてたけど」

「は?マジで!?歌夜のやつ、教えたの?!」

「あぁ、あの子無防備すぎだろ。もっとちゃんと捕まえとかねぇと、マジでライに盗られるぞ」

途端に苦い表情になった海斗は、俺に聞こえるギリギリの声で呟いた。

「それは俺の役目じゃ、ないんだよなぁ……」