少しだけ押し黙った海斗は、再び口を開いた。
目線は前を見据えたままで。
「でもさ、そんな迷いだとか怒りだとか、音楽に乗せちゃだめでしょ？自分たちの音を聴きに来てくれてる子たちにすっごく失礼だし……大切にしてないよね」
海斗は俺が居ること忘れてんじゃ？って感じで、ただ独り言のように喋り続ける。
「だから、いくら自分たちの調子が悪くたって、気分がのらなくったってファンの前ではそんなの微塵も感じさせたくない。……俺たちはステージに立ったらいつだって笑顔なの。そう、決めたんだよ、みんなでね」
あぁ……コイツは本当に音楽が好きなんだ。音楽に関わる全てのモノが大切なんだ。
そう感じた。
「すげぇな、お前ら」
少しだけ笑い顔を作って小さく海斗に呟いた俺に、普通だよ～、と笑って答えたボーカリストの顔はやっぱり眩しいくらい輝いてた。
