「オマエ、いつも楽しそうでいいなぁ~……」
溜め息と共に、思わず本音が漏れる。
コイツらのバンドは、いつだって楽しそうな音楽を奏で、いつだって笑顔でじゃれ合ってる。そんな彼等の関係は、今の俺たちには過去のものだ。
「羨ましいよ、まったく……悩みなんてなさそうでさ」
フッと、自分を笑うように笑みを零せば、俺を見下ろしていた海斗が、どさりと隣に腰を下ろした。
「それは違う」
「え?」
「それは違うよ、タキ」
いつの間にか海斗の真剣な顔が目の前。その瞳はいつもよりも少しだけ鋭く光っていた。
目にかかりそうな前髪の下、濃い茶色の目がジッと俺の顔を覗き込んでくる。
「俺たちにだって、悩みも問題も山積みだよ。今だって、結構大変なの。でもさ」
そこで一度言葉を切った海斗は、スッと俺から視線をはずし、正面を見る。
それを目で追った俺は、その横顔の意外にも苦しそうなことに驚いた。
コイツでもこんな辛そうな表情するのか……。



