まあでも、何事もないならないに越したことはないか。
そう思いながら、俺たちもそれぞれ軽く頭を下げて席を立った。
「あー終わったー。やっぱ俺インタビューって苦手」
ライがグッと両腕を伸ばしながらぼやく。
それを見ながら俺も頷いた。
「だな。音楽の説明なんて、言葉で言えるかっての。聴いて分かってくれよって感じだな」
「そうそう、文章読んでいくら情報入れたって、耳で聴くのとは大違いだよなぁー」
「うんうん」
ぼそぼそとしゃべり続ける俺たちの背後、ショウがクスッと笑うのが聞こえた。
「なんだよ?」
ライがムッとしたように振り向くと、そのふくれっ面を見下ろすショウが面白そうに口を開いた。
「いやぁ、ライもなかなかいいこと言うなぁと思って感心してただけ」
「……馬鹿にしてんだろ、それ」
「あ、勘も鋭くなってる。成長したんじゃね?」
あーあー、完璧にからかってる、コイツ。
ニヤリと嫌味な笑みを浮かべてるショウと、今にも頭のてっぺんから湯気を出しそうなライを交互に見ながら、俺は苦笑い。
そんな俺たちが部屋を出ようと、櫻井が開けてくれたドアへ向かった時だった。
背後から、東條の声。



