――その数日後。
さらに頭を抱えたくなる事が待ってるなんて思ってもない俺は、昼過ぎに迎えにきた櫻井の車に乗り込んで、某テレビ局へ向かった。
「今日はニューシングルのコメント撮りと、雑誌インタビュー。夜は歌番組の生放送なんで宜しくお願いしますね」
「はいはい」
「それで……インタビューなんですけど、あの……」
バックミラーでこっちを見ながら、どうも歯切れの悪い櫻井に、俺は首を傾げた。
「なに?なんかマズいことでもあんの?」
背中だけ見ても、ギクリ、って言葉がぴったりの様子で櫻井はボソボソと口を開く。
「実は……今日の雑誌インタビュー、またアノ人なんですよ……」
「アノ……ってまさか、アノ、東條って奴か?!」
シートにもたれていた俺は、思わず声を張り上げ櫻井の顔の横までつんのめるようにして、その顔を覗き込んだ。
「わわっ?!タキさん落ち着いて!座ってくださいよ!」
「落ち着いてられるか!なんであんな奴の取材なんて入れるんだよ?!っざけんな!!」
「す、すいません!」
櫻井が悪いわけじゃないのに怒鳴ってしまった俺に、運転しながらも頭を下げる。
やべ……これじゃ俺、八つ当たりだ。
「わりぃ……」
「いえ、でも今日の取材はもともとなかったんですよ。急に上から指示が……なんか、あの東條って人、コネがあるっぽくて断るなって……」



