VOICE・2



……――あっという間に一曲弾き終えた時には、久々の高揚感と爽快感が俺の体を支配していた。

もっと弾きたい。

そんな思いが頭の奥で浮かんだ。

「次は?」

無意識に海斗に問いかけている俺がいた。

その問いに海斗が答えようとした時、不意にその瞳が俺を通り越して背後へ向けられた。

「あ、紅志!やっと来た~!」

その満面の笑みが向けられた方へ振り返った俺の視線の先。
呆れたような表情を見せる紅志が腕を組んで立っていた。

その瞳が心なしか冷たく光る。
牽制、されたような気が、した。



「悪い、バイト30分延びてさ」

「いいよ、代わりにタッキーが通りかかったから誘ってみた。タッキーありがとね!」

屈託なく笑う海斗に俺も少しだけ笑って返した。

「いや、いいよ。俺も久しぶりに面白かったし」

「マジで?良かった~、またやってよ!今度は紅志も一緒にさ!」

そうだな、なんて適当に相槌を打っていながら、心の中では別のことを考えていた。





二度とやらねぇ、コイツとは。



二度と、やれない、やったら……引きずられるの、目に見えてる。