原曲よりも少し速めのテンポで、かつポップな雰囲気を足してイントロを弾いてやると、横で海斗がニンマリするのが見えた。
視線で合図すれば、彼はスッと深く息を吸い込んであの声を喉から紡ぎ出す。
耳に心地良いそのクリアボイスは、ギターの音色に乗って、駅前の広場に広がる。
通り過ぎようとする人達の足を止めた。
……気持ちいいなぁ、この声。
マイクなしでこんなに広がるなんて、最高の喉だ。
高音で少し掠れる声が、痺れるくらいに胸に響いて、一瞬鳥肌が立つ。
おぉ~やべぇ!
めちゃくちゃ……楽しい!
いつの間にか自分が楽しんで弾いていることに気付いた。
そして、この声のためにギターを弾ける、あのギタリストを羨ましく思った。
……少しだけ。



