サラリとハスキーな声に告げられた曲名に、海斗の唇が上がる。
「お。それいっちゃう?!」
「たまには聴きたいなと思って」
ゴスロリ女もニッと唇を笑みの形に変える。
その瞬間、あれ?と違和感が頭を掠めたけど、それは海斗の声にかき消された。
「タッキーできるよね?」
「あ、あぁ…まあたぶん」
「オッケ!じゃあ決まり。そんじゃリクエスト、翼をくださいロックバージョンで!」
その直後、海斗がカウント。
3、2、――…。
くっそ!やってやろうじゃん!
俺はギターのネックを握り直して、深呼吸を一度。
右手を弦に滑らせた。



