――――………。
「はぁ~い!今日は俺の相棒が遅れてるんで特別にゲスト~!!某バンドのギタリスト、タッキーで~す!!」
「……ども」
能天気な海斗の声に、俺はかぶってたハンチング帽をさらに深くかぶって、下を向いた。
バレたらどうすんだよ~っ!!
イヤ~な緊張の中、俺は海斗の隣で何故かアコギを握らされていた。
俯いたまま、少し下にある海斗の顔を睨む。
が、俺の緊張とはうらはらに、にっこり微笑みながら海斗は口を開く。
「てことで。リクエスト受け付けるよ~!聴きたい曲ある人いる?」
……リクエストだぁ?俺弾けなかったらどうしてくれるわけ?
そんなこと思ってると、海斗を囲む輪の中、最前列にいた女の子が手を挙げた。
全身黒で統一されたゴスロリファッションの彼女は、勝ち気な瞳を海斗に向け、曲のタイトルを告げる。
「翼をください」



