缶飲料というものがある。

 ジュースであろうとコーヒーであろうとポタージュであろうとそれはまあなんでもいい。

 それらを買うとき、アナタは何を気にして買っているだろうか。

 味?

 価格?

 缶のデザイン?

 おそらくはその辺りだろうか。

 そこで私はふと思う。



『アナタは何故に“中身”を信用出来るのか』



 ということを、だ。

 ペットボトル飲料であれば少なくとも、中身が見える。

 しかしこの缶飲料という物はそうではない。

 もしかしたら缶コーヒーとありながら実は中身が毒劇物であるという疑いを何故に持たないのか。

 品質管理は徹底されている?

 缶に穴が空いていれば一目瞭然?

 物流ルートは総て製造者から配達人まで記録がされている?

 なるほど、さもありなん。

 だがしかし、私はそんな意見に“待った”をかける。

 アナタは生活をする上で、スーパーなどに買い物にいくかと思う。

 そこは売り場がしっかりと店員によって管理され、整然と商品が並べられていることだろう。

 客が多少商品の並びを乱したところで、それはたちどころにもとの状態に戻される。

 特に飲料関係は比較的人の目につく位置にあることが多い。

 成る程、これでは人目が気になって毒の缶を鞄から出すなどなかなか出来まい。

 まして監視カメラというものもある。

 棚にそれを置いているところを収められては即、足がつく。

 しかし、アナタはこんな光景をみたことはないだろうか?

 店内をぶらぶらとしているとき、その場所にまったく関係のない商品がポツンと置いてあるところを、だ。

 それはしばらくそこに放置され、親切な客か几帳面な店員があるべき場所へと戻しにいく。

 そう――“しかけ”だなどとは露ぞ思わず。

 これにより、毒物を設置した人間は客か店員ということになる。

 加えて置く場所を監視カメラの死角にさえすれば、真犯人に辿り着く可能性は極めて0に近くなる。

 後は精巧な偽物をじっくりと時間をかけて作れば良いだけ。



 さて。

 これでもまだ、アナタは缶飲料を何の疑いも持たずに買うというのだろうか……。