店は高田馬場の駅裏の路地にあり、
西武池袋線の実家から通う翔太と、池袋西口の雑居ビルの五階に住む美香は、
自然と池袋東口の居酒屋で飲む形になる。
そして大抵は明け方までホテルで過ごし、駅のホームで別れる。

「夏になったらさ、絶対海に行こうな。
早く生きてぇなぁ。やっぱ夏だよな。二月は寒いよ・・
とどめって感じだよな、冬の。
冬は恋人達の季節って気もするけど、俺はどっちかって言うと
ギラギラ太陽の下で愛し合いたいなぁなんて」
「普段お日様が出てる時間に眠ってる反動じゃない?
そんなこと言っていつだって日曜日は結局夕方まで起きられないくせに」

 たって今口にしたハマチが胃から逆流してきそうになるのを、
ウーロンハイのグラスに残った氷で必死に誤魔化す。
あの時と同じだ。間違いない。
たった四ヶ月で喜びのためあまり気にならなかったけれど、
あの時も悪阻が酷く、手術の日まで吐き気が治まらなかった。