「自分の両親は自分を護って死にました。それでも、己を捨ててはいないで生きている」
初めて姫は皆の前でその事を話した。
辛いはずなのに。
「捨てるのが償いじゃない。自分らしく生きるのが償いなんです。今の頌歌は、嫌になります」
姫の瞳には涙が。
「せんぱ…」
辛いのは自分だけじゃなかった。
明るく大好きな憧れの先輩も辛かったんだ。
それなのに、俺は……私は…
涙がボロボロこぼれる。
「ゴメンなさいぃぃい…もう、自分を捨てないから。嫌いに、ならないでぇぇぇええ」
今までの頌歌とはまるで違う言い方。
「本当の頌歌は好きですよ」
「先輩」
頌歌は姫に抱きついた。
頭を優しく撫でる。
「辛かったですね。本当の自分を隠して男になろうとしてたんですからね」


