走り去って行った理緒の背を見送っていた男が、口を開いた。



「…にしても、いつも大変そうだなぁ理緒は」
「そうねぇ〜。あの子を見つけたのも理緒ちゃんだったし…」
「あの時は本当に驚いたな!!あの崖から落ちて、生きてた奴なんて今まで居なかったしな」
「あの子はきっと運が強いんだわ」
「…俺もその運分けて欲しいもんだ」



そう言って笑い、男は鍬(くわ)を持ち直した。



「…さぁーて、仕事再開っすかね」
「じゃあ私は洗濯してくるわ」



男は再び畑仕事に戻り、奥さんも家の中へと戻っていった。