全ての生き物にとって、芽吹きの季節である春を迎えた白月村。 暖かな気候と心地よい風が吹くからか、白月村に穏やかな空気が流れる。 しかし、そんな穏やかな空気を感じれない一人の少女がいた。 白月村の村長の孫娘、理緒だ。 春に着る衣服を揺らし、村を走り回っている。 その表情には、少し怒りの色が伺えた。 「おーい理緒。どうしたんだ?」 走るのを止め、辺りを見渡していた理緒に畑仕事をしていた男が声をかけた。