肩にかけた袋の中には、まだ何も入っていない。

いつもなら兎や狸が木の実を探しに動きまわっている筈なのだが、今日はいない。


今までにそんな事がなかった為、理緒は少し焦っていた。


だからだろうか、僅かな物音に気づいた理緒が投げ放った短刀は獲物に当たらず、崖の下に落ちていった。



「……はぁ」



小さくため息を吐き、理緒は遠回りしながらも落ちた短刀を拾いに行った。



理緒が使っている短刀は、祖父から貰った大事な短刀で全部で20本程ある。


今までも一本も無くさないようにと、全部回収してきた。



もちろん、今回も例外ではない。