「本当に紫衣は間抜けだね。
だけど、合格だ。
そうでしょ?殿。」
厳しかった紅葉さんの口調が柔らかくなって三成に話しかけている。
ずっと黙って私達のやり取りを見ていた三成は微笑みを浮かべながら頷いていた。
「紫衣、私には妻はいない。」
「いるじゃないか…嘘はいけないよ。」
三成の言葉を茶化すように話す紅葉さんを睨みつける三成。
そんな三成にニッコリと笑いかけながら紅葉さんは話し出した。
「殿の奥方は俺なんだよ。」
紅葉さんの言葉に私は首を振った。
本にそんなこと書いてなかった。
慰めなんかいらない。
「信じないの?」
挑戦的な眼差しを向ける紅葉さんに私は静かに口を開いた。
「信じられるはずがありません。そんな話聞いたことないです。」
「そりゃそうだろ。
極秘だからね。」
「それにしたって…
信じられるはずがないです。」
言い合う私達の間に立つように三成は言葉を落としたんだ。
「紅葉の言うことは本当だ。
私は妻を娶った。
だが、その妻は主君秀吉様の側に仕えているのだ。」
それって…
秀吉に奥さんを取られちゃったって事?
驚く私に淡々と三成は話をしてくれたんだ。
史実にも残っていない話。
信じられないけど、真実は今私が耳にしている話の方だろう。


