「アキ、わかって――」
「わかってるよ! わかってるけど、わかんないんだよ!」
6歳の俺のボキャブラリーじゃ、あのときの気持ちは表現できなくて。
俺は手当たり次第に近くの物をつかんで、オカンに投げつけた。
わかってる。
わかってるんだ。
入院しなきゃ、またさっきみたいな“ほっさ”を起こすかもしれない。
“ほっさ”を起こしたら、息ができなくて、苦しくて、死にそうになる。
だから、わかってる。
でも。
この悔しさを、歯がゆさを、どう処理していいのか。
それが俺にはわからなかった。
「アキ……ごめんね。本当にごめんさない……」
オカンは暴れる俺の体を抱きしめて、ずっと泣いていた。



