「佐山さん。原付ありがとうございました」
「おぉ」
ベンチでタバコを吸っていた佐山さんに、キーを返す健吾。
俺は健吾の少し後ろに立って、ふたりの会話が終わるのを待った。
「で、桜中の松岡信之介には会えたのか?」
「あ、いや……それっぽい奴はいたんスけど」
「なんだ、不発かよ」
静かに笑いながら、タバコの火を消す佐山さん。
健吾も1年生の中じゃ体がデカイ方だけど
佐山さんのガタイは、その比じゃなかった。
座っていてもわかる長い手足や、広い肩幅。
鋭いまなざしは、野生動物を連想させた。
「あ~、月ちゃん。おかえり!」
佐山さんの後ろから、女の人が声をかけてきた。
たしかうちの2年生で、佐山さんの彼女だ。



